愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
私に馴染みの深い顔を持つその少女は近くの馬車へと姿を消した。
間違いない、彼女こそが本物だ。
去ろうとする馬車に必死で手を伸ばそうと駆け出す。だがその捜索の手はあえなく阻まれることになった。
「どうしたの、義姉さん?」
心配したように顔を覗き込んでくれたサキヌ。
「今……」
彼にそう言おうとして口を噤む。彼らは私が偽物だと知ったら悲しむだろうと頭によぎったのだ。
そしてここは自分が見つけ出して、速やかにラウス様の元へと連れて行くべきではないかと考え直す。
捕まえられはしなかったものの、彼女が乗って行った馬車の家紋はしっかりと瞼に焼き付いている。
これは説得の絶好の材料になるだろう。
お屋敷に帰ったら家紋名鑑を借りて探してみよう。
『家紋名鑑』――名前だけは知っていた。
だがサンドレア家でお父様の書斎にある本棚の肥やしとなっているらしいそれが、こんなにも分厚く重いものだとは思わなかった。
夜会の翌日、お義母様に貸して欲しいと願い出るとなぜだかはわからないが嬉しそうに私の腕の中にそれをズドンと置いた。
間違いない、彼女こそが本物だ。
去ろうとする馬車に必死で手を伸ばそうと駆け出す。だがその捜索の手はあえなく阻まれることになった。
「どうしたの、義姉さん?」
心配したように顔を覗き込んでくれたサキヌ。
「今……」
彼にそう言おうとして口を噤む。彼らは私が偽物だと知ったら悲しむだろうと頭によぎったのだ。
そしてここは自分が見つけ出して、速やかにラウス様の元へと連れて行くべきではないかと考え直す。
捕まえられはしなかったものの、彼女が乗って行った馬車の家紋はしっかりと瞼に焼き付いている。
これは説得の絶好の材料になるだろう。
お屋敷に帰ったら家紋名鑑を借りて探してみよう。
『家紋名鑑』――名前だけは知っていた。
だがサンドレア家でお父様の書斎にある本棚の肥やしとなっているらしいそれが、こんなにも分厚く重いものだとは思わなかった。
夜会の翌日、お義母様に貸して欲しいと願い出るとなぜだかはわからないが嬉しそうに私の腕の中にそれをズドンと置いた。