愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 愛より金を選んだ私もやはり根はサンドレアの人間。
 愛した人には出来れば愛を選んで欲しいと思ってしまうのだ。

 欲を出すならば勘違いしたって面を考慮して借金の返済期間を延ばしてほしい。
 ただでさえ嫁の引き取り先のなかった女が借金をこしらえて、捨てられたとなれば私はもうお嫁に行くことは出来ないだろう。

 いやそれは言い訳に過ぎない。私はもう誰かに恋をすることは出来ない。

 恋なんて一回で十分なのだから。

 疲れているのだと勘違いしたらしいラウス様は「今日はもうお開きにしよう」と提案してくれた。

 疲れているどころか体調は万全なのだが、彼の提案を喜んで飲み込んだ。部屋に戻った私は着替えることなくベッドへと潜り込む。寝るためではない。屋敷中が寝静まるのを待つためだ。

 この屋敷を去るのは夜にした。
 朝や昼、陽の高い時間は人目につきやすい。私が一人で出歩いているのをカリバーン家とつながりのある誰かに見られでもしたら、カリバーン家に迷惑をかけてしまう。

 最後の最後でそんなヘマはしたくない。
 目を閉じて外の音だけに集中する。音がするうちは外には出られない。

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