愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 私よりもずっと前から生きていて、私よりも先に死んでしまったネコ。そして再び私の前に現れてくれた優しくて頼り甲斐のある私の家族だ。

 階段を下りると柔らかくて毛皮でモフモフとしたグスタフを胸に抱きしめる。
 こうすると暖かくて、落ち着くのだ。


 グスタフという相棒の温もりを腕と胸の二ヶ所で実感しながら外へと続くトビラに手をかけると、背後から聞こえるはずのない声が耳を刺激した。

「モリア? こんなところで一体何をしているんだ?」
「ラウス……様。何で……もうお眠りになったはずじゃ……」

 私はベッドの中、耳をそばだてて十分に待ったはずだ。それなのになぜ、よりにもよって一番出会いたくはなかったラウス様がここにいるのだろう?

 その疑問はラウス様の口から明かされる。

「昔からあんまり寝つきはいい方じゃなくてな……。物音がするから気になって来てみればモリアを見つけたというわけだ。それで、モリアは何をしていたんだ?」
「……散歩、です」
「そうか。なら俺も一緒にしてもいいか?」

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