愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 けれどラウス様の体調不良と、失敗してばかりの新人である私の羞恥心を天秤にかけたら圧倒的に前者が勝った。

 屋敷の風紀を乱してしまうのは心苦しいが、この姿は後で詫びればいいだろう。

「私、ハーヴェイさん呼んできますね!」

 ラウス様に向かって宣言し、ドアへと手をかける。けれど私がドアを開くよりも先にラウス様が私の身体に覆い被さった。ドアに手をついた彼の下に収まった私には影が落ちる。

「ラウス様?」
「その格好で外に出す訳にはいかない」

 後回しでいい、なんて公爵家では許されないのだろう。

 どんなに体調が悪くても、品位を大切にする。
 その心意気こそがカリバーン家が社交界でも一目を置かれる理由なのだろう。

 部屋を見回し、昨日着ていた服をとりあえず探したがそれらしき物は見当たらない。替えの服もない。

 ラウス様の部屋で抱かれて、服は私が寝ている間にでも回収されてしまったのだろう。
 服がなければ部屋の外に出ることも叶わない。

 だがこのままだとラウス様の体調が……。
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