愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 仕立屋でドレスを買おうとすると大体の場合、既製品の中に私の身体にピタリと合うものはない。

 既製品に少し装飾品を付けてもらったりするだけのお姉様たちとは違い、オーダーメイドのものを注文するか、ツーサイズほど上のサイズのドレスを買って裾や袖を直してもらうか。

 手間とお金が余計にかかる私は『モリアの栄養は全部胸にいったのかしらね……』とよくお姉様たちから苦笑いをされるほどだ。


 そんな私は普段着も大きめのサイズを買わないと入らない。
 背は小さいのに大きな服を着なければならない私は側から見ればさぞかしアンバランスに映ることだろう。

『完璧である』と社交界、それも下級貴族が集まる夜会ですら噂されるカリバーン家の使用人ともあろうものがそんなことを許す訳がないのだろう。

 不便に思うこともあれ『ないよりはあった方が断然いい』と断言するお兄様たちの言葉を信じて暮らしてきた。

 確かに顔つきが地味な私にとって特徴はないより一つでも多くあった方がいいのだが、今となってはその唯一ともいえる外見的特徴はない方が便利だ。

< 36 / 341 >

この作品をシェア

pagetop