愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
「ですが……」

 困ったようにドレスを差し出す彼女達から「大丈夫ですので」と受け取る。

 だが冷静になって構造を確認してみれば、私が普段着ているものとは大きく異なった。ドレスの背中部分の紐は、どう頑張った所で一人で結ぶことはできなかったのだ。

 これでは誰かに手伝ってもらうほかない。
 一度断ってしまったためか、彼女達は部屋から姿を消し、残るは私とラウス様。主人を手伝わせるなんてもってのほか。

 そもそもラウス様の前で堂々と着替えるのはどうなのだろう?
 冷静になって、初めて羞恥心が溢れ出す。

 着替える前に部屋を出るのはアウトだけど、ラウス様に後ろを向いていてくださいとも言えない。

 何か視界を遮るものは……。
 視線を彷徨わせていると、正面から優しく包み込まれた。

「手伝わせてくれないか?」

 耳元で囁かれた声に怒りはない。
 けれど呆れもないので、のろのろと着替えたことで気分を害したという心配はなさそうだ。

「よろしくお願いします」

 このままの状態で居る訳にもいかず、他に手伝ってくれそうな相手も見つけられない私はラウス様にお手伝いをしてもらうことにした。

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