愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 見当違いなことを挙げてはなぜか私の機嫌を取ろうと必死になる彼らは使用人思いなのだろう。

「いや……あの、そうではなくて……ですね。立場が違いますから」

 だがやはり立場は大事だ。
 いい思いばかりさせてもらっていてはいつまで経っても借金の返済に終わりはやってこない。むしろ追加料金を取られそうな気さえする。

「……!? やっぱり嫌よね……。そうよね、頻繁に義母と一緒に食卓を囲むなんて……」
「義姉さんと食事が出来て楽しかったから、また一緒に食べれたらって……」
「私たちは一旦席を外すことにしよう」
「両親も弟たちも悪気はなかったんだ。だから許してやってはくれないか?」

 義母? 義姉さん?
 まるで私が嫁に来たかのような言葉だ。

 おそらく私の聞き間違いだろう。だからといってなぜか気落ちしている彼らに聞き返す勇気はない。

「許すも何も席を外すべきなのは私の方です。申し訳ありません、ご無礼をお許しください」

 連れて来たのはラウス様ではあるが……。
 素早く頭を下げてからその場を後にすると早足で廊下を歩いていく。

< 53 / 341 >

この作品をシェア

pagetop