愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 スタスタスタと歩いても歩いてもさきほどからずっと視界に入っている階段との距離を一向に詰められない。すると背後から私の後を付けてくるような足音が聞こえてくる。

「モリア! 待ってくれ、モリア」

 ラウス様の叫ぶような呼び声が聞こえ、ピタリと足を止め振り返った。

「何でしょうか、ラウス様」
「朝食、食べないのか……」

 どうやらそれを尋ねに来たらしい。カリバーン家では朝食は義務か何かなのだろうか。


『一日の始まりは朝食のエネルギー摂取から!』
 これは隣国の男爵家の婿養子にいった伯父様の口癖だ。


 昔から嫌というほど聞かされてきたからか朝食を食べることには賛同だけど、というか食べないと元気は出ない。けれど私が朝食を食べるのは今ではない。

「後でいただきます」
「今、じゃダメなのか?」
「私はラウス様達と同じ席で食事をできるような立場ではありませんから」
「だが一昨日は一緒にしたではないか! それには夜だって、その……」

 顔を赤らめるラウス様になんだか悪いことをしてしまったのだと罪悪感が募る。

 だが私は使用人なのだ。
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