愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 期間限定妻(仮)ではあるものの、仮初めは仮初めなりの使命感が沸く。
 それにはまずラウス様がどんな人物か知ることから始めよう。

 私たちは一昨日出会ったばかりなのだから。
 ラウス様は私から女性を引き離して、ラウス様のお父様らしき妙齢の男性に向かって突き飛ばす。そして身体をクルリと反転させて私に笑みを向ける。

「とにかく俺たちは朝食を食べようか」
「ラウス、お母様に向かってその態度はないんじゃないかしら?」

 見事に受け止められたラウス様のお母様が苦言をこぼしてもラウス様は気に留めない。

 それどころか周りにいる使用人たちでさえ特に動じた様子はなかった。

「ラウス様とモリア様の朝食はこちらにご用意してあります」
「ああ。行こうか、モリア」

 そしてラウス様は私の腰に手を添えてエスコートをしてくれる。

 扉に背を向ける直前、ラウス様のお父様は親指をグッと天井に向けていた。あとの三人は何だかまだ言い足りないような表情をラウス様に向けている。

 それから案内されたのは先ほどのダイニングルームからさほど離れてはいない部屋だった。机の上にはすでに朝食が所狭しと並べられていた。
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