愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される

 しかしその机に刺さっているのは二つの椅子。どうやらこれは私とラウス様のために用意された食事らしい。

 身をわきまえたつもりが、余計な手間をかけさせてしまったらしい。申し訳ない。
 部屋に入ってすぐのところに控えていた使用人にペコリと心ながらの謝罪をする。

 それから明らかに二人では食べきれない量の食事を黙々ととり続けていった。

 昨晩はあまり気にならなかったのだが、ラウス様はその身体のどこに入るのか疑問になるほどよく食べる方だった。

 普段は私も食べる方ではあるけれど、もう空腹のピークが過ぎ去ったせいであまりお腹は減っていない。

 普段はかぶり付くパンをわざわざ一口大に千切ってから口に放り込む。すると無言を貫いていたラウス様がやっと口を開いた。

「結婚式のことなんだが……」
「結婚式……ですか?」

 そう聞いてまずはじめに思ったのは、結婚式するの? だった。

 私がカリバーン家にやってきたのは借金のカタとしてであり、そもそも人違いである。
 けれどラウス様は私のことを思い人であると疑っていない。だから結婚式を挙げたいと思うのは不思議ではないのかもしれない。

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