愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 そう話すとハーヴェイさんは廊下に飾ってある石膏のように固まってしまった。

「……詳しい理由をお聞きしても?」

 ハーヴェイさんは固まった表情で何とか理由を聞き出そうとする。それもそうだろう。これは逃げたいと告げているようなものだ。

「サンドリア家にある材料を使いたいのです」

 カリバーン家から逃げるつもりなど毛頭ないが、ブーケを作るには材料となる特殊な薬品が必要なのだ。

 そしてその薬品を調達するにはそれ相応のお金がかかる。今の私は一文無しで、換金できそうなものを一つも持っていない。

 サンドリア家も借金しているとはいえ、屋敷には確か2年ほど前に嫁入りをしたお姉様が使った薬品が少しくらいは残っていたはずだ。

 開けてから結構な時間が経ってしまっているから、それが使えるかどうかは試してみるまでわからない。けれど試してみる価値はあるだろう。

「……それは王都で調達はできないものなのでしょうか?」
「出来るとは思いますが……その、買えないといいますか……」

 買えない理由としてはお金がないからというごく単純で簡潔な理由に尽きるわけだが、それを言ってしまうのは憚られた。

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