愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 空気の入れ替えをすれば少しは良い案が浮かぶかと窓を開け、風を感じる。初めから分かっていたことだが、アイディアなんて降ってくることはない。当然だ。

 暇だな……と天井を見上げてもシミ一つない。
 いっそ昼寝が趣味だったら良かったのに、と考えた所で、優しく扉を叩く音が耳に届いた。


「はい」
「義姉さん、少しいいかな?」

 やって来たのはラウス様の弟さん。

 伺いを立てているようではあるが彼は私が答えるよりも先に入室している上、なぜか壁に手をついて部屋の出口を塞いでいた。

 これでは応じる以外の選択肢を塞がれたようなものだ。

「あ、はい」

 そう返すと弟さんの背中の後ろで何やら動き出す。
 そして彼がドアを開くとラウス様のお母様が嬉しそうな顔を浮かべてこちらを見つめていた。

「サキヌ、だから言ったでしょう? モリアちゃんなら快く開けてくれるって」
「お母様はいつも強引だから」

 どうやら弟さんの腕は私の脱走を防いでいたわけではなく、ラウス様のお母様の侵入を防いでいたらしい。

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