愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
言い合いをしている最中も彼が壁から腕を放すこともなければ、手を壁から外そうとするお母様に屈することもない。
この二人の会話で弟さんの名前を知ったわけだが、おそらくは初日の食事で自己紹介をされていたのだろう。
私が忘れていただけで……。
こんなことがある度に、早々にこの悪い癖を直さなければと思いはする。
だが中々直らないというのが現状である。
ここは何事もなかったかのように振る舞うしかあるまい。
とりあえず一ヶ月後にはラウス様の妻となるわけだから、ラウス様のお父様とお母様のことは『お義父様』『お義母様』と呼べばいい。
その二人は名前がわからなくともどうにかなりそうである。
問題はここにいない妹さんである。呼ぶ機会が早々にないこと。
そして彼女に遭遇する前に、誰かが彼女の名前を呼ぶことを心の底から祈っておく。
「モリアちゃん?」
サキヌさんの腕を挟んでではあるが、出来る限りで寄せられたお義母様の顔はこれから話すことの深刻さを表していた。
「はい、何でしょうか?」
そう当たり障りのない言葉で返したものの、自ずと力が入る。
この二人の会話で弟さんの名前を知ったわけだが、おそらくは初日の食事で自己紹介をされていたのだろう。
私が忘れていただけで……。
こんなことがある度に、早々にこの悪い癖を直さなければと思いはする。
だが中々直らないというのが現状である。
ここは何事もなかったかのように振る舞うしかあるまい。
とりあえず一ヶ月後にはラウス様の妻となるわけだから、ラウス様のお父様とお母様のことは『お義父様』『お義母様』と呼べばいい。
その二人は名前がわからなくともどうにかなりそうである。
問題はここにいない妹さんである。呼ぶ機会が早々にないこと。
そして彼女に遭遇する前に、誰かが彼女の名前を呼ぶことを心の底から祈っておく。
「モリアちゃん?」
サキヌさんの腕を挟んでではあるが、出来る限りで寄せられたお義母様の顔はこれから話すことの深刻さを表していた。
「はい、何でしょうか?」
そう当たり障りのない言葉で返したものの、自ずと力が入る。