愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
「……ハーヴェイから聞いたのだけど、実家に帰りたがっているって本当かしら?」

 もうすでに伝わっているのか……。
 さすがカリバーン家の使用人は仕事が速いと感嘆するしかない。

「ええっと……」

 材料を取りに行きたいという目的があったにしても、やはり誰が聞いても実家に戻りたがっているとしかとれないだろう。

 ましてやカリバーン家に来てまだ丸二日も経過はしていないのだ。
 取り繕ったところで、彼らからしてみれば言い訳に過ぎないのだろう。

 だからと言って正直にいうのも……。
 何というべきか迷っていると優しく声をかけられる。

「別に責めているわけじゃないのよ? マリッジブルーなら私も経験してるし、モリアちゃんの気持ちはよくわかるの!」

 もともとラウス様と結婚したいと思っていたわけではないから、マリッジブルーというのは違うような気がする。

 マリッジブルーっていうのは多分お姉様がなっていたような、結婚へ対する不安のようなものだろう。

 だがそんな私の違和感は伝わることなく、私以外の二人は次々に言葉を交わしていく。

「お母様はそんな繊細じゃないだろ……」
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