愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 隣の二人は未だに並び順についての口撃戦を交えている。どうやら私を、というよりはラウス様の妻を二人とも歓迎しているようだ。


 未だに並び順で揉め続ける二人の後を追う形でたどり着いたのは、私が朝方植え替えを手伝ったのとは反対側に位置する庭だった。

「綺麗……」

 そこに一歩足を踏み入れると呟くように言葉が漏れた。

 辺りには手入れの行き届いた真っ赤なバラが咲き誇っている。どれも溢れるほどの自信があるのか、庭に用意されたお茶会のセットにその美しい顔を見せている。

 その主役に見える鮮やかなバラの赤と、それを支える葉の緑が敢えて脇役に徹することで真っ白なティーテーブルは居心地よさげに、そこが自身の居場所であると信じて疑っていないように鎮座出来るのだ。

「ここはカリバーン家自慢の庭なのよ!」

 庭全体に目を奪われている私にお義母様は嬉しそうに胸を張る。

 屋敷に飾られた花瓶や絵画は見る人によってはその素晴らしさがわかるのだろうが、私にはよくわからない。それよりも足を一歩踏み入れただけで虜にされてしまった庭の方が心惹かれる。

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