愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 けれど、ラウス様に心配をかけてしまうほどに食べられないわけではない。

 実際に先ほどまでは、ブーケの話が出るまでは少しではあるが口に運んでいた。だがもうその気力すらなくなってしまっている。

「…………そうか。では部屋へと戻ることにするか」

 気落ちしているものの身体的な問題は全くなく、健康そのものなのだが、元気が無くなった私を具合が悪くなったと勘違いしたらしいラウス様はわざわざ私の席まで回って、手を差し出す。

「立てるか?」
「はい、あの、大丈夫ですから」
「遠慮はしなくていい」

 遠慮なんてこれっぽっちもしていないのだが、差し出した手で私の手を優しく包み込んで歩き出す。

 その歩幅は私を気遣ってなのか昨日よりも小さく、ゆったりとしている。

 それがなんだかむず痒く思えてくる。きっと今、私の顔は赤く染まっていることだろう。

「辛い、よな……」

 ラウス様は語りかけるようにそう口にすると私の膝の裏に手を差し込んで、体の前で横抱きにした。

「ラ、ラウス様!? 何をしているんですか!」

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