愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
ああ、今すぐにもこの身を預けて寝てしまいそうだ……。ってダメダメ、寝ちゃダメ。
居心地がいいベッドに落とされ、危なく意識を手放しかけた私は頭を左右に振って少しでも正常な判断を取り戻す。ラウス様のベッドに運び込まれたということはつまり……そういうことなのだ。
一度きりの経験では初心者マークの取れない私が、ラウス様を満足させられるかは分からない。
けれどせめて、初日に続いて気を失うなんて失敗だけはしてはならない。
胸はバクバクと脈打つが、これは今からラウス様に抱かれることにドキドキしているのか、失敗を恐れているのか判断がつかない。
キュッと拳を固めれば、ラウス様はそれに気づいたらしい。私の手を撫で、優しく微笑んだ。
「大丈夫。今日は何もしないから、安心して眠ってくれ」
「……わかりました」
人違いである以上、大きな間違いを重ねないのは良いことだとは思う。
けれどベッドに横たわった状態で、何もしないと告げられてしまうのは、自分の魅力が足りないからなのではないかと勘ぐってしまう。
ラウス様はただ、私の体調を気遣ってくれているだけなのに。