愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 ならば私にできること、それはラウス様の眼が覚めるまでの間、物音一つ立てないことくらいだろう。

 全く我ながら不甲斐ない。
 こんなことなら普段からおじさまたちに荷物を持ってもらわないで、多少無理してでも重たい荷物を運ぶ習慣をつけておくべきだった。

 いやだって、おじさまたちもお兄様達も『女の子なんだから無理はするな』って言ってくれていたし、こんな機会あるなんて思わなかったのだ。


 そもそもお金のために嫁ぐことなど誰も予想していなかった。仕方ないといえば仕方ないことではある。

 なんにせよ過去を悔やんだところでもう遅いというわけだ。

 幸いというべきか、私はこの屋敷内で役に立てそうなことは特になく、そしてサンドレア家の結婚式には欠かせないブーケを作るという楽しみももう無くなってしまった今、時間だけは有り余っている。


 ならばその時間を筋力トレーニングの時間に充てようではないか!
 最低でもどこか身体が悪いらしいラウス様が倒れた時にも運べるくらいにはなりたいものだ。

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