愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 一時期お兄様達の真似をして筋肉トレーニングに励んでいたこともあり、少しくらいなら何をすればいいかも知っている。

 あの時はすぐに挫折してしまったが、目標のある今ならやり遂げられる気がする。

 よし! っと空いた手で拳を作りながら、ラウス様を起こさぬよう心の中で精一杯の気合いを入れた。

 結局ラウス様の眼が覚めるまでの一刻ほどの間、私はずっとラウス様を見つめていた。

 それは仲睦まじい男女が愛する異性の寝顔を眺めて……なんてそんなロマンチックなことは一切ない。

 頭に浮かぶのはいかにして効率的に筋肉をつけるか、そしてラウス様の身体を運ぶ方法についてだ。

 どこに腕を入れれば力を入れずに、スムーズに運べるのか、そればかり考えていた。

「おはようございます、ラウス様」
「おはよう、モリア」

 どこかぼんやりとした表情で、目はうつろだ。
 ラウス様は朝は弱いらしい。頭の中のラウス様メモに書き入れておく。

「昨晩はベッドを独占してしまい、申し訳ありませんでした」
「いや、俺がしたかっただけだから……」

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