乳吸鬼♀&未来偵察メイド(裏編):ヴァレリの前日譚
(4)
「ヴァレリさんには奥さんは?」
「え? 私の村に送って行くんですか?」
レトラの言動や反応は、単純に「助かった、ラッキー」というものではないようだった。命が助かったと思った直後に、明らかに「王子様のお迎え」のような何かを期待している。シチュエーションも含めてヴァレリは及第点だったのか。なんだか「女と腕を組むとぶら下がられて抱き上げさせられる」という箴言を思い出してしまう。
そもそも彼女を助けるという行動が「彼女を気に入った」とでも受けとられたのだろう。あながち的外れではないにしろ、どこか食い違いがあるように感じなくもない。
「ひとまず村に送って、無事を知らせたければ。もしも奉公先を探すなら、知り合いのエルフでも紹介しよう」
するとレトラは不安そうな、不満そうな顔になった。「転売用の商品」にされるとか、それでさらに酷いめに遭うかもしれないと思ったか。なまじっかヴァレリアンが優しい態度をとったことで、愛情や永久就職を予期や期待して、肩透かしされた気持ちもあるのかも知れなかった。
「君に似た人を知っていて」
「ふう、ん?」
レトラは疑わしそうな顔だった。
(5)
「何にもしなかったんですね」
翌朝に安い宿屋の一室で、目覚めた第一声がのぞき込むレトラ。少し寝不足のようだった。
あるいは、彼女の立場からすれば、ヴァレリアンの振る舞いや態度は逆にわけがわからないのかもしれない。
「今日は村に送る。三日くらいで着くはずだ」
ヴァレリアンがそう言うと、レトラは口元をへの字にしてお辞儀する。感謝はしていても納得はしていない様子。まだ疑ってもいるらしい。
(6)
適当に言いくるめて、村に置いてくるつもりだった。あとで様子を見に行ってもいいから。
だが、そうは問屋が卸さない。
村が無法者の襲撃で壊滅していた。
「私、死にたい」
泣きじゃくるレトラは、悲嘆への理解と「それ以上の何か」を言外に要求しているようだった。
「村がこんなになったら、私は……」
「大丈夫。君は「未来偵察者」だから」
ヴァレリアンが真相を明かすと、レトラは半信半疑で、しかも不満そうでもあった。
「私が死ねば、時間が戻ると?」
「たぶん、そうなる。村が元に戻るかはわからないけど、君は少し前の時間に戻って生き返る。記憶は忘れるようだけど」
「だったらヴァレリさんのことも?」
「たぶん。で、どうする?」
間があった。
レトラがあからさまな怒りの表情になる。
「どうして、そんな嘘を? 私が嫌いなんですか?」
「いや。本当のことだし」
そしたら殴られた。
「だったら、殺せよ! 殺せよ! 私を殺せー!」
レトラは顔を真っ赤にして、ヒステリックに涙を流して、泣き叫びだす。たぶん慰めて欲しいのだろうが、ヴァレリが手間をかけてもどうせ時間リセットしたら覚えていないだろう。
「わかった。村のことはできれば助かるように手を打ってみよう」
「ふぇ?」
あっさり承諾したヴァレリアンに驚くレトラ。
次の瞬間、ヴァレリアンの生体義肢の足の蹄がレトラの顔面を粉砕・陥没骨折させ、脳と頭蓋骨を虚空に飛び散らせていた。
ややあって、時間リセットが始まる。
(どうせ時間回帰でリセットで、あの娘が覚えていないんだったら、いっそのことレイプして遊んじゃえば良かったか?)
過去の、あのレトラの先祖の「性悪女」のことを再び思い出した。毎回、違う男と恋仲になって、リセット前には相思相愛だった男によく冷たく当たっていたものだった。
(7)
再びレトラと街角の檻で再会したとき、彼女はヴァレリアンを覚えていないようだった。
それで、ようやくわかった。
たぶんあの性悪女は、相思相愛だった男が自分との愛を覚えていないことが、精神的に不愉快だったり耐えられなかったのかもしれない。ただ「利己的」というだけでは説明のつかない意地悪さも、それで説明がつくだろう。
だからヴァレリアンはこんなふうにレトラに声をかける。
「死にたかったら言ってくれ」
「ヴァレリさんには奥さんは?」
「え? 私の村に送って行くんですか?」
レトラの言動や反応は、単純に「助かった、ラッキー」というものではないようだった。命が助かったと思った直後に、明らかに「王子様のお迎え」のような何かを期待している。シチュエーションも含めてヴァレリは及第点だったのか。なんだか「女と腕を組むとぶら下がられて抱き上げさせられる」という箴言を思い出してしまう。
そもそも彼女を助けるという行動が「彼女を気に入った」とでも受けとられたのだろう。あながち的外れではないにしろ、どこか食い違いがあるように感じなくもない。
「ひとまず村に送って、無事を知らせたければ。もしも奉公先を探すなら、知り合いのエルフでも紹介しよう」
するとレトラは不安そうな、不満そうな顔になった。「転売用の商品」にされるとか、それでさらに酷いめに遭うかもしれないと思ったか。なまじっかヴァレリアンが優しい態度をとったことで、愛情や永久就職を予期や期待して、肩透かしされた気持ちもあるのかも知れなかった。
「君に似た人を知っていて」
「ふう、ん?」
レトラは疑わしそうな顔だった。
(5)
「何にもしなかったんですね」
翌朝に安い宿屋の一室で、目覚めた第一声がのぞき込むレトラ。少し寝不足のようだった。
あるいは、彼女の立場からすれば、ヴァレリアンの振る舞いや態度は逆にわけがわからないのかもしれない。
「今日は村に送る。三日くらいで着くはずだ」
ヴァレリアンがそう言うと、レトラは口元をへの字にしてお辞儀する。感謝はしていても納得はしていない様子。まだ疑ってもいるらしい。
(6)
適当に言いくるめて、村に置いてくるつもりだった。あとで様子を見に行ってもいいから。
だが、そうは問屋が卸さない。
村が無法者の襲撃で壊滅していた。
「私、死にたい」
泣きじゃくるレトラは、悲嘆への理解と「それ以上の何か」を言外に要求しているようだった。
「村がこんなになったら、私は……」
「大丈夫。君は「未来偵察者」だから」
ヴァレリアンが真相を明かすと、レトラは半信半疑で、しかも不満そうでもあった。
「私が死ねば、時間が戻ると?」
「たぶん、そうなる。村が元に戻るかはわからないけど、君は少し前の時間に戻って生き返る。記憶は忘れるようだけど」
「だったらヴァレリさんのことも?」
「たぶん。で、どうする?」
間があった。
レトラがあからさまな怒りの表情になる。
「どうして、そんな嘘を? 私が嫌いなんですか?」
「いや。本当のことだし」
そしたら殴られた。
「だったら、殺せよ! 殺せよ! 私を殺せー!」
レトラは顔を真っ赤にして、ヒステリックに涙を流して、泣き叫びだす。たぶん慰めて欲しいのだろうが、ヴァレリが手間をかけてもどうせ時間リセットしたら覚えていないだろう。
「わかった。村のことはできれば助かるように手を打ってみよう」
「ふぇ?」
あっさり承諾したヴァレリアンに驚くレトラ。
次の瞬間、ヴァレリアンの生体義肢の足の蹄がレトラの顔面を粉砕・陥没骨折させ、脳と頭蓋骨を虚空に飛び散らせていた。
ややあって、時間リセットが始まる。
(どうせ時間回帰でリセットで、あの娘が覚えていないんだったら、いっそのことレイプして遊んじゃえば良かったか?)
過去の、あのレトラの先祖の「性悪女」のことを再び思い出した。毎回、違う男と恋仲になって、リセット前には相思相愛だった男によく冷たく当たっていたものだった。
(7)
再びレトラと街角の檻で再会したとき、彼女はヴァレリアンを覚えていないようだった。
それで、ようやくわかった。
たぶんあの性悪女は、相思相愛だった男が自分との愛を覚えていないことが、精神的に不愉快だったり耐えられなかったのかもしれない。ただ「利己的」というだけでは説明のつかない意地悪さも、それで説明がつくだろう。
だからヴァレリアンはこんなふうにレトラに声をかける。
「死にたかったら言ってくれ」
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