乳吸鬼♀&未来偵察メイド(裏編):ヴァレリの前日譚
(5)
「時間帯による魔族の所在からすれば、夕方に「内城」の中でやるのがよさそうだな」
「だな!」
魔族というのは先天的に日光にアレルギーがある傾向があって(致命的ではなくとも疲労の度合いや長時間の日焼けによる火傷)、それは人間を捕食することで悪化する。そのために日中は出歩きたがらない者が多く、全体の風潮で生活時間帯の昼夜が普通の人間とは逆転しがちなのだった。
だから夕方は、魔族にとっては人間の夜明け前に近い意味合いになる。通常には自分の住み家にいて、じきに動き出す頃合い。
内城で全域に「毒」を撒けば、魔族たちは戦闘能力が劇的に低下する。その専用の毒とは合成された内分泌撹乱物質で、魔族を強い風邪のような症状に陥れる(人間を捕食している者ほど症状は重くなる)。家に隠っているうちは無事でも、外に出た時点で影響を免れまい。たとえ無事な奴らがいたとしても、すぐ近隣にエルフやドワーフたちがいるのだから、人間たちが暴動を起こせば結託して袋叩きにするだろう。
彼らは自分たちの立場を理解していない、もとい幸福に忘却しているのだ。いかに一般的な毒や呪いに耐性があるとはいえ、最初の数百年も前の創始事情からして「対策手段」は準備されているのだし、遺伝子そのものに爆弾が仕掛けられているようなものである。もしも第一世代・第二世代あたりの始祖たちが今の「魔族と呼ばれる劣化や変成した子孫たち」を見たら苦笑いすることだろう。
(思い出した。ヴァレンシュタイン! あの「聖堂の吸血騎士」だ)
数百年も(もう千年?)前の友人。
(そうか、あの娘は子孫か。どおりで既視感があると思った。それにしても「乳吸い」とは因果なものだ)
家系の事情からすれば、むしろ必然のなりゆきや帰結ですらあったかもしれない。
かつて、通常の遺伝子改良では飽き足らず、人間を超える種族を生みだそうとした第一世代。本来は「吸血」は「人間の命を分け与えられて生きる」という「絆」だった。その名のヴァレンシュタインが旧教皇庁に仕えた伝説的な傭兵隊長に由来することなどからも、本来に期待されていた役割やポジションは明白だった。つまり「人間の守り手」であり、悪く言えば「人の形の生物兵器」。
だが時代の必要(人類の存亡危機)や軍拡競争などが理由で粗製乱造があちこちで行われて、結果が「魔族の誕生」。それを反省して新しくエルフやドワーフなどの種族が作られ、中和と対抗策がなされたが、魔族は魔族として独特の運用がなされた(他にどうしようもなかった)。そして「微調整」は人間がやるしかなく、ヴァレリアンがこうしてやって来たのもそのためだ。
(内城の周りから、周りながらあの毒を投げ込みまくったらいけそうか?)
ほとんど発想が害虫駆除の毒餌だ。
逐一に真面目に律儀に戦う気もない。
そんな考え事をしているうちに異変が起きた。
(6)
ヴァレリアンは我が目を疑う。
彼が立っているのは、数時間前に通り過ぎた道だ。内城までにはまだ距離がある。さっきまですぐそばだったはずなのに。
「時間帯による魔族の所在からすれば、夕方に「内城」の中でやるのがよさそうだな」
「だな!」
魔族というのは先天的に日光にアレルギーがある傾向があって(致命的ではなくとも疲労の度合いや長時間の日焼けによる火傷)、それは人間を捕食することで悪化する。そのために日中は出歩きたがらない者が多く、全体の風潮で生活時間帯の昼夜が普通の人間とは逆転しがちなのだった。
だから夕方は、魔族にとっては人間の夜明け前に近い意味合いになる。通常には自分の住み家にいて、じきに動き出す頃合い。
内城で全域に「毒」を撒けば、魔族たちは戦闘能力が劇的に低下する。その専用の毒とは合成された内分泌撹乱物質で、魔族を強い風邪のような症状に陥れる(人間を捕食している者ほど症状は重くなる)。家に隠っているうちは無事でも、外に出た時点で影響を免れまい。たとえ無事な奴らがいたとしても、すぐ近隣にエルフやドワーフたちがいるのだから、人間たちが暴動を起こせば結託して袋叩きにするだろう。
彼らは自分たちの立場を理解していない、もとい幸福に忘却しているのだ。いかに一般的な毒や呪いに耐性があるとはいえ、最初の数百年も前の創始事情からして「対策手段」は準備されているのだし、遺伝子そのものに爆弾が仕掛けられているようなものである。もしも第一世代・第二世代あたりの始祖たちが今の「魔族と呼ばれる劣化や変成した子孫たち」を見たら苦笑いすることだろう。
(思い出した。ヴァレンシュタイン! あの「聖堂の吸血騎士」だ)
数百年も(もう千年?)前の友人。
(そうか、あの娘は子孫か。どおりで既視感があると思った。それにしても「乳吸い」とは因果なものだ)
家系の事情からすれば、むしろ必然のなりゆきや帰結ですらあったかもしれない。
かつて、通常の遺伝子改良では飽き足らず、人間を超える種族を生みだそうとした第一世代。本来は「吸血」は「人間の命を分け与えられて生きる」という「絆」だった。その名のヴァレンシュタインが旧教皇庁に仕えた伝説的な傭兵隊長に由来することなどからも、本来に期待されていた役割やポジションは明白だった。つまり「人間の守り手」であり、悪く言えば「人の形の生物兵器」。
だが時代の必要(人類の存亡危機)や軍拡競争などが理由で粗製乱造があちこちで行われて、結果が「魔族の誕生」。それを反省して新しくエルフやドワーフなどの種族が作られ、中和と対抗策がなされたが、魔族は魔族として独特の運用がなされた(他にどうしようもなかった)。そして「微調整」は人間がやるしかなく、ヴァレリアンがこうしてやって来たのもそのためだ。
(内城の周りから、周りながらあの毒を投げ込みまくったらいけそうか?)
ほとんど発想が害虫駆除の毒餌だ。
逐一に真面目に律儀に戦う気もない。
そんな考え事をしているうちに異変が起きた。
(6)
ヴァレリアンは我が目を疑う。
彼が立っているのは、数時間前に通り過ぎた道だ。内城までにはまだ距離がある。さっきまですぐそばだったはずなのに。