乳吸鬼♀&未来偵察メイド(裏編):ヴァレリの前日譚
(2)
「おい、歩け!」
手の鎖を引っ張られ、レトラは我に返る。
なんだかさっき「死んだ」ような気がする。
見張り役と引率の隙を突いて、衝動的に通りがかりの石壁にとりすがって、何度も自分で思い切り頭をぶつけたのだ。自殺目的に近い衝動的な行動で、最後には頭蓋骨が砕けて気が遠くなったはずだったのに。
まったく何事もなかったようだ。
別に頭も痛くない。
(変な白昼夢、よくみるなあ)
そんなことを思って歩きながら、目頭にまた涙がにじんでくる。村から「供出」されて奴隷・人畜に売られゆき、これから晒し者にされて競売され、たぶん待ち受けるのはさらに悲惨な運命。
本当に「今死んだほうがまし」かもしれない。
そんな思いが自殺の白昼夢を見せるのだろうか。
(3)
「ん~?」
ルントゥがむきだしの天真爛漫さで、真ん丸に輝かせた双眸とキスでもしようというかのように押し迫ってくる。悪意はなさそうだったが圧がすごい。まるで中型か大型犬からさほどの悪気はないながらの鼻面アップで迫られるかのようだ。
ルントゥ本人がヴァレリアンに起きた時間ループを理解していないようだったし、原因や犯人は彼女ではなさそうだ。だが別の意味で返事に窮してしまう。ただでさえ説明が難しい上に、ヴァレリアンのやって来た理由や目的は魔族壊滅なのだから、おそらく殲滅や殺害対象でなくても当事者の端くれではある。
「どうして、私の名前を知ってたり、スカートがめくれているのが見もせずにわかったわけ?」
「……」
「話せない理由でも?」
黙っているのもまた、態度だけで漠然と後ろ暗さを白状しているようなものなもか。とはいえ、ヴァレリアンの深意までそうそう悟られるとは考えにくい。あえて黙って強引にごまかしておくほうが、同じ疑われるにしても次善かもしれない。
それとも。
ヴァレリアンは真顔で口を切った。
「ここだけの話なんだが」
「ふむ?」
「特別な魔術を使える。女の子のパンツが見える魔法で、エルフの頭おかしい奴から買って伝授してもらった。他はほとんどできないが、こんなくだらない特技のおかげで、君のスカートがめくれているのがわかった」
沈黙があった。
ルントゥは疑わしげに、目を丸くして小首を傾げて見つめてくる。ヴァレリアンはあえて無茶苦茶なことを言って煙に巻くつもりだったが、はたして上手くいくか?
(4)
「ぐふう!」
逃げようとして走り出したレトラは、背後からの衝撃と体を貫通される感覚、それから激痛があって地面にぶっ倒れた。喉の奥から鉄さびと塩の味がして吐血し呼吸すら困難になる。
薄れゆく意識の中で不吉な会話を聞いた。
「おい、どうする?」
「これじゃ致命傷だろ? 肉にするしかあるめえ」
「別嬪で胸もけっこうあるのにもったいない」
「これくらいのならいくらでもいるさ。ちょいと小休止で、コイツが生きてるうちに楽しんどくか? 死んでもしばらくはあったけえだろ?」
引きづられる感覚の中で世界が暗くなった。
(5)
また、時間ループしたようだ。
さっきまで会話していたルントゥが目の前から突然に消える。そして何事もなかったかのように再び前方からやって来る。
今度は迂闊に話しかけず、わざと見送る。
チラと横目に振りかえりぎみに見れば、やっぱりルントゥはスカートの後方をナップザックに挟み込んで、パンツとお尻が丸見えだった。ルントゥも何か感じたらしく少しだけ振り返ったが、あくまでヴァレリアンのことで、自分の事には気がついていないようだった。
「スカート」
「?」
その一言で、ルントゥはややあって「あっ」と自分の恥さらしに気づいたようだ。
ヴァレリアンはさっさと歩み去った。ひとまずごまかせたのだから、ボロをだすのは避けたい。
「おい、歩け!」
手の鎖を引っ張られ、レトラは我に返る。
なんだかさっき「死んだ」ような気がする。
見張り役と引率の隙を突いて、衝動的に通りがかりの石壁にとりすがって、何度も自分で思い切り頭をぶつけたのだ。自殺目的に近い衝動的な行動で、最後には頭蓋骨が砕けて気が遠くなったはずだったのに。
まったく何事もなかったようだ。
別に頭も痛くない。
(変な白昼夢、よくみるなあ)
そんなことを思って歩きながら、目頭にまた涙がにじんでくる。村から「供出」されて奴隷・人畜に売られゆき、これから晒し者にされて競売され、たぶん待ち受けるのはさらに悲惨な運命。
本当に「今死んだほうがまし」かもしれない。
そんな思いが自殺の白昼夢を見せるのだろうか。
(3)
「ん~?」
ルントゥがむきだしの天真爛漫さで、真ん丸に輝かせた双眸とキスでもしようというかのように押し迫ってくる。悪意はなさそうだったが圧がすごい。まるで中型か大型犬からさほどの悪気はないながらの鼻面アップで迫られるかのようだ。
ルントゥ本人がヴァレリアンに起きた時間ループを理解していないようだったし、原因や犯人は彼女ではなさそうだ。だが別の意味で返事に窮してしまう。ただでさえ説明が難しい上に、ヴァレリアンのやって来た理由や目的は魔族壊滅なのだから、おそらく殲滅や殺害対象でなくても当事者の端くれではある。
「どうして、私の名前を知ってたり、スカートがめくれているのが見もせずにわかったわけ?」
「……」
「話せない理由でも?」
黙っているのもまた、態度だけで漠然と後ろ暗さを白状しているようなものなもか。とはいえ、ヴァレリアンの深意までそうそう悟られるとは考えにくい。あえて黙って強引にごまかしておくほうが、同じ疑われるにしても次善かもしれない。
それとも。
ヴァレリアンは真顔で口を切った。
「ここだけの話なんだが」
「ふむ?」
「特別な魔術を使える。女の子のパンツが見える魔法で、エルフの頭おかしい奴から買って伝授してもらった。他はほとんどできないが、こんなくだらない特技のおかげで、君のスカートがめくれているのがわかった」
沈黙があった。
ルントゥは疑わしげに、目を丸くして小首を傾げて見つめてくる。ヴァレリアンはあえて無茶苦茶なことを言って煙に巻くつもりだったが、はたして上手くいくか?
(4)
「ぐふう!」
逃げようとして走り出したレトラは、背後からの衝撃と体を貫通される感覚、それから激痛があって地面にぶっ倒れた。喉の奥から鉄さびと塩の味がして吐血し呼吸すら困難になる。
薄れゆく意識の中で不吉な会話を聞いた。
「おい、どうする?」
「これじゃ致命傷だろ? 肉にするしかあるめえ」
「別嬪で胸もけっこうあるのにもったいない」
「これくらいのならいくらでもいるさ。ちょいと小休止で、コイツが生きてるうちに楽しんどくか? 死んでもしばらくはあったけえだろ?」
引きづられる感覚の中で世界が暗くなった。
(5)
また、時間ループしたようだ。
さっきまで会話していたルントゥが目の前から突然に消える。そして何事もなかったかのように再び前方からやって来る。
今度は迂闊に話しかけず、わざと見送る。
チラと横目に振りかえりぎみに見れば、やっぱりルントゥはスカートの後方をナップザックに挟み込んで、パンツとお尻が丸見えだった。ルントゥも何か感じたらしく少しだけ振り返ったが、あくまでヴァレリアンのことで、自分の事には気がついていないようだった。
「スカート」
「?」
その一言で、ルントゥはややあって「あっ」と自分の恥さらしに気づいたようだ。
ヴァレリアンはさっさと歩み去った。ひとまずごまかせたのだから、ボロをだすのは避けたい。