おくれなば
「紅羽 梅です。べに色の方の“あか”なんです」
「最初、俺が間違って呼んじゃって。べにばねって」
ふふふ、とほんのり頬を赤らめるべにちゃん。
ははは、と申し訳なさそうに頭をかく橘くん。
二人は一体どんな関係なんだろう。
ちくり、と、こころの薄皮に何かが刺さったような感覚がした。
「そ、そうなんだ!橘くん、さすがにべにばねはないって!あははっ」
二人の和やかな世界に合わせて笑う。
少しだけ頬がひきつっているような感じがするのは気のせい気のせい。
「あ、じゃあ私もべにちゃんって呼んでいい?」
「えーっと……ちょっと恥ずかしいので、あまり人前では……」
もじもじ、と伏目がちに恥じらう彼女。
まつパもマスカラも施されていない真っ直ぐなまつ毛が、ぱちぱちと揺れる。
白い肌に弧を描く赤い唇がぎゅ、と結ばれる。
ふわりと色気が香ったような気がした。