おくれなば
ドキ、ドキ、ドキ、ドキ。
初めて見るその表情に、私の胸の高鳴りは、止まらない。
「ほら、この花とか、すっげー綺麗だと思わない?」
薄紫のもこもこした花に触れる。
そっと口づけするみたいに顔を近づけて、すうっと息を吸う。
「良い香り」
その花のようにふわりと柔くなる表情。
いつもの目つきの悪い君はどこにもいない。
私の心がきゅっとくすぐったくなる。
「ライラック。花言葉は、『恋の芽生え』です」
梅ちゃんも橘くんの隣でふふっと笑う。
そっか。
そうなんだ。
これは病気でも呪いでもない。
「恋の、芽生え……」
私は、恋を、しているんだ。