おくれなば
梅
* * *
桜さんは可愛いです。
あの日、橘くんと桜さんが話しているのを初めて見て、心がざわつきました。
そもそも一匹狼のような橘くんが、誰かと話している姿、ほとんど見たことがなかったのに。
きっとこれは嫉妬でしょうか。
体が勝手に動いて、二人の会話を遮ってしまいました。
そんな自分が怖いと思いました。
恋心というものは、こんなにも人を醜いものに豹変させてしまうのでしょうか。
そう思っても、やはり橘くんを好きだという気持ちは止められません。
止められないどころか、日に日にもっともっと好きになってしまうのです。
入学式の翌日、園芸部の庭で出会ったあなたは、ゆったりと花々を眺めていました。
少し目にかかった長い前髪から覗く瞳は、それはもう、穏やかで、甘くて、そして儚げな感情を秘めているようでした。
そんなあなたを、この世に存在するどんな花々よりも美しいと感じたのです。
恋に落ちるまでの時間は、わずか一つの瞬きほど。