おくれなば



橘くんの足が止まり、ゆっくりこちらを振り向きました。


「……いいよ、もちろん」


うれしくて心が弾んだ私はきっと満面の笑みを浮かべているのでしょう。


側に駆け寄って、再び歩み始めて。

鞄を取って教室を出ても、橘くんは私の歩幅にあわせてくれました。



「橘くんはどうしてお花が好きなのですか?」

「んー、一言で表すなら、綺麗だから。単純な言葉だけどそれが全てかな」

「そうなんですね。花はなぜ美しいのでしょう」

「……そう言われると、何でだろ」


考えたことも無かったな、と言って空を見上げる橘くん。

その青いキャンバスには何が映っているのでしょう。


「私は……花というのは、可憐な姿でたくさんの人々を魅了することの代償として、短い命しか与えられなかった、哀しく儚い存在に思います」

「……なんだかそれは、切ないな……」

「でも、だからこそ、健気に生きる花々を、壊れないように、優しく、大事に、守ってあげたいと思うのです」

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