おくれなば


「ふふふっ、冗談ですよ。色のセンスがとても良くて、掲示したらきっとたくさんの人の目を引くと思います」

「じゃあべにちゃんが描いて、俺は色塗りする」

「そうしましょう」


橘くんが座る隣の机に、下書きが済んだ紙を置きました。

すると橘くんはふと何か思いついたように口を開きます。


「べにちゃんって、彼氏いる?」

「……えっ?」


空耳でしょうか。

隣を確認すると、橘くんが頬杖をついてこちらを向いています。


「べにちゃんは、付き合ってる人いるの?」

「へ……!?」


幻聴でしょうか。

聞き間違いでしょうか。

感情の読めない双眼が、じっとこちらを見つめています。


「あ、いや、答えたくなかったらごめん、別に……」

「い、い、いないです!」

「……そうなんだ、意外」


空耳でもなく幻聴でもなく聞き間違いでもありませんでした。

確かに橘くんは、私に恋人の有無を尋ねてきたのです。



「……どうして、そんなことを、訊くのですか……」



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