おくれなば
ドクンドクンとうるさい心臓に負けないように、声を振り絞って尋ねたセリフの返答は。
「……まあ、気になったから」
いると思った、という呟きは、張り詰めていた糸が切れたように息が多く含まれていました。
気になったから、というのはどう捉えたらいいのでしょうか。
私のことが気になっているのでしょうか。
それともクラスメイトとして知りたかっただけでしょうか。
それとも、単なる一刻限りの気まぐれな疑問でしょうか。
無感情な表情からは、何も解することができません。
だから私も、訊き返します。
「橘くんは、恋人とか……いるのですか……?」
「ううん、いないよ」
「そう、なんですね……」
「そもそも俺こんな目つきだから、近づく人めったにいないし、ずっと孤独だよ」
それは枯れかけた花のように、しゅんと萎れた声でした。
胸がぎゅっと苦しくなって、息が詰まります。
橘くんが悲しいと、私はもっと悲しくなるからです。
「私はもっと……近づきたいです」