おくれなば



ドクンドクンとうるさい心臓に負けないように、声を振り絞って尋ねたセリフの返答は。



「……まあ、気になったから」


いると思った、という呟きは、張り詰めていた糸が切れたように息が多く含まれていました。


気になったから、というのはどう捉えたらいいのでしょうか。

私のことが気になっているのでしょうか。

それともクラスメイトとして知りたかっただけでしょうか。

それとも、単なる一刻限りの気まぐれな疑問でしょうか。


無感情な表情からは、何も解することができません。

だから私も、訊き返します。


「橘くんは、恋人とか……いるのですか……?」

「ううん、いないよ」

「そう、なんですね……」

「そもそも俺こんな目つきだから、近づく人めったにいないし、ずっと孤独だよ」


それは枯れかけた花のように、しゅんと萎れた声でした。

胸がぎゅっと苦しくなって、息が詰まります。

橘くんが悲しいと、私はもっと悲しくなるからです。




「私はもっと……近づきたいです」



< 40 / 57 >

この作品をシェア

pagetop