おくれなば
「……、」
「私は、一度も橘くんを怖いと思ったことはありません」
「……べにちゃん、」
「あんなふうに優しい目で花を見つめる橘くんが、こわい人なんて有り得ないです」
気が付けば私は席を立っていて、あなたの手を強く強く握りしめていました。
私の頼りない小さな手では、あなたの大きな手をぜんぶ包み込むことはできなくても。
この体温を、少しでも、あなたに分けられたらいいなと思って。
そうしたら、ほらね。
「べにちゃん、ありがとう」
まるで春の風のように、とても柔く、とても温かく、
とても心地良い息を吐いて、笑ってくれます。
「悲しい顔しないでください。橘くんはひとりではありません」
「うん、べにちゃんがいるもんね」
「はい、私が橘くんを孤独感から守ってみせます!」
「……ははっ、かっこいいべにちゃん」
やっぱりあなたは笑った顔が似合ってます。
あなたの笑顔のエネルギー源が私から湧いてきたらな、なんて甘酸っぱいセリフは言えません。