おくれなば
橘
* * *
「あれ、今日べにちゃんだっけ」
朝、登校して教室に寄らず庭へ直行すると、見慣れた黒髪が目に入った。
「いえ、早く起きてしまいまして」
「そっか。じゃあ一緒にやろう」
月末の定期テストが1週間後に迫るため、勉強時間を確保するべく朝の活動は今日から当番制にしたのに。
結局ふたりで朝のルーティンをする。
べにちゃんはいつも通り終始楽しそうに水やりや雑草刈りをしていた。
その姿を見ていたら、何だか当番制は今後も意味を成さない予感がした。
ふと、いつも通りでない違和感に気づき、あっと声が出る。
「どうしました?」
「三つ編みじゃない」
いつも左右にあった三つ編み。
今日は何処にもなくて、つややかな漆黒はさらりと解き放たれていた。
「……変、ですか?」
少し恥じらった様子で髪をさわる彼女。
変も何も、いつもの三つ編みも似合っているけど、
「それも可愛いと思う」
うっかりお世辞みたいに味気ない言葉を落としてしまう。