おくれなば
「すぐ見てね」
そう言ってぎゅっと俺の手を閉じたら前を向く桜。
手のひらに何かが込められて、広げてみると一枚の紙切れ。
『放課後、話したい』
そんな言葉が綴らていた。
「……」
何の話だろう。
丸っこい文字と、後頭部の花飾りを交互に見る。
今日はキラキラした白い宝石の集合体で、よく見ると桜の形になっていた。
話とは何なのかしばらく考えてもわからなかったが、とりあえず返事をしなければと思いつき、綺麗とは言えない字で書き殴る。
『わかった』
それを小さく畳んで、とんとん、と肩を叩く。
一瞬びくっと小さく震え、ゆっくり顔だけこちらを振り向く。
朝礼中の先生に気付かれないよう、無言でそれを差し出して目で合図する。
桜は紙を受け取り、手の中でそっと確認したら、俺を見て軽く会釈して、前を向き直した。
放課後にクラスメイトから呼び出されるなんて、人生で初めてだ。
どうしてか、変に意識してしまって、放課後までずっと落ち着かなかった。