おくれなば
そんな俺の様子を察したのはただ一人。
昼休み、べにちゃんと庭へ行ったときのこと。
「橘くん、何かあったのですか?」
「え?いや、何も……」
「今日はずっと桜さんを見てる気がします」
べにちゃんは誤魔化せない。
普段から人をよく見ているから、俺の変な行動も筒抜けだったようだ。
「……今日は放課後、先に帰ってほしい」
「え……、どうしてですか?」
残念そうに声を落とすべにちゃん。
何だか申し訳なくなり、言葉が淀んでしまう。
「その……用事、ができたから……」
「用事、ですか?」
「うん、だからごめん、今日は……」
「何の用事ですか!?」
ごもごもとした俺の言葉を遮って、強い口調で尋ねるべにちゃん。
「っ、べにちゃん……?」
「……大きな声を出してごめんなさい。その、言えないような、用事なのでしょうか」
「……」