おくれなば
桜の話の内容は予想もつかないが、わざわざ手紙で伝えてくるもんだから、なんとなく、黙っておいた方がいい気がしていた。
だけど、あんなに取り乱したべにちゃんを、初めて見たから。
口を滑らさずにはいられなかった。
「桜に話があるって言われたから」
誰にも言わないでね、と念のため付け加えておく。
「そう、でしたか……。わかりました、先に帰ります」
納得したような、何かを考えているような、複雑な顔でお弁当を食べ始めるべにちゃん。
ごめんね、と再度謝っておき、俺も昼食を貪った。
そうして昼が過ぎ、テスト期間だというのに午後の授業はあまり頭に入らず、あっという間に放課後が訪れた。
「宏弥、」
ちょうど教科書とノートを鞄に詰め終わってチャックを閉めたところだった。
顔をあげると、桜が立っていた。
「話って何?」
「えっと……場所変えたいから、ちょっと来てほしい」
気のせいかもしれないが、その声はいつもより震えているように感じた。