おくれなば
体育館裏の手洗い場に着く。
ふたつしか蛇口がなくってあんまり広くないそこには、先客がいた。
私の持ってる大きなドリンクキーパーはさすがに洗えないから、しぶしぶ待つことにした。
「……あ、すみません。どうぞ」
ん?この声って……。
振り向くと、あの鋭い目つきがそこに。
「ひっ……」
ほぼ反射で後ずさってしまった。
「…………白木、さんか」
じっ、とこちらを見つめる彼。
相変わらず目つきの悪い橘くん。
「あ、えっと、」
「それ、重くない?」
「え?」
貸して、と言ってドリンクキーパーを私の両手から奪い、ひょいっと軽々しく手洗い場に置く。
「じゃあね。部活がんばって」
そう言ってそそくさと歩き出す。
あまりにもスムーズすぎて一瞬何が起こったのかわからなかった。