おくれなば
そんな彼女は廊下に出て、無言で前を歩く。
放課後の廊下は騒がしい。
さようならー、ばいばーい、テスト範囲広いねー、……
賑やかな談笑たちとすれ違い、足を進める。
だんだん静かになっていく。
ふたり分の足音だけになり、ひと気の無い階段の終わりで止まった。
「宏弥」
ゆっくり振り返って、俺を見上げる桜。
真剣な眼差し。
こわばった表情。
にじみ出る緊張感。
それらが伝染して、俺の心臓もバクバクと暴れ出す。
「私、宏弥のことが好き」
か細く、でも、芯のある言の葉が、静かに舞った。