おくれなば
階段の方を向く。
一番下の段、手すりに片手をついて、はぁはぁと息を切らして立っているのは。
「べに、ちゃん……?」
「梅ちゃん……!」
俺たちは同時に驚きを発した。
そこに彼女がいる事実と、その唇から放たれた音の両方に、戸惑いを隠せない。
「私もっ……!私だって、橘くんの一番近くにいたいんですっ!!」
猛ダッシュしたあとのように覚束ない足取りだが、本人はお構いなしに階段を上がってくる。
「橘、くん、っはあ、はあ……」
「だ、大丈夫?べにちゃん、」
支えてあげないと倒れてしまいそうで、ほぼ反射的に手を肩に回そうと差し伸ばした
「そういう誰にでも優しいの、やだ」
……つもりが、桜に腕を掴まれて阻止された。
「選んでください、橘くん」
べにちゃんを見ると、倒れそうなか弱い姿ではなく、そこにあるのは真っ直ぐで力強い眼差しだった。
──橘くんはひとりではありません
──孤独感から守ってみせます!
──近づきたいです……
あの日の放課後の、かっこいいべにちゃんが蘇る。