おくれなば


階段の方を向く。

一番下の段、手すりに片手をついて、はぁはぁと息を切らして立っているのは。



「べに、ちゃん……?」

「梅ちゃん……!」


俺たちは同時に驚きを発した。

そこに彼女がいる事実と、その唇から放たれた音の両方に、戸惑いを隠せない。


「私もっ……!私だって、橘くんの一番近くにいたいんですっ!!」


猛ダッシュしたあとのように覚束ない足取りだが、本人はお構いなしに階段を上がってくる。


「橘、くん、っはあ、はあ……」

「だ、大丈夫?べにちゃん、」


支えてあげないと倒れてしまいそうで、ほぼ反射的に手を肩に回そうと差し伸ばした


「そういう誰にでも優しいの、やだ」


……つもりが、桜に腕を掴まれて阻止された。


「選んでください、橘くん」


べにちゃんを見ると、倒れそうなか弱い姿ではなく、そこにあるのは真っ直ぐで力強い眼差しだった。


──橘くんはひとりではありません

──孤独感から守ってみせます!

──近づきたいです……


あの日の放課後の、かっこいいべにちゃんが蘇る。


< 53 / 57 >

この作品をシェア

pagetop