おくれなば


「橘くん!」


待って、と追いかける。


ギロリ。

立ち止まって振り向く橘くんは、やっぱり愛想ないけれど。


「なに?白木さん」

「桜、でいいよ!」


もっと知りたい、と思った。


「……桜さん」

「はい!」

「いい名前だね」

「あはは、ありがと」


うまく笑えているかわからないから、早くその怖い目つきに慣れたいな。


隣に並んで教室まで向かう。


橘くんは園芸部らしい。
だから昨日じょうろを持っていた。

真相がわかってすっきりしたのもつかの間、なぜ園芸部?という疑問や毎日水やりしているの?とか次々と謎が浮上して。

教室までの道中はほとんど私が質問攻めしてしまった。


それぞれの席に着く。
鞄をおいて初めて後ろの席を向く。

座っていても目線は上になっちゃうくらい、橘くんは身長が高い。


「桜さんはマネージャーだったんだね」

「うん、高校からは勉強も頑張りたいし、ちょっと肩の力抜こうかなって」

「でもサポートする側も大変じゃない?」

「そうなのー、思ったより大変!でも慣れるまでの辛抱かな」
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