恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 これでこそ、まともな経営者だ。社員の責任は最終的に自分にもある。知らなかったでは済まされない——同じ立場に立つ者として、身につまされる思いがあった。

 俺の意向を伝えると、田中社長はその場で専務を呼び出している。

 そして当の本人は、そんな社長の心情など露ほども理解していない様子で、呑気な足取りで姿を現した。

「ほぉ? 彼が。麗美が君に憧れているようでなぁ。縁談を申し込もうと思っていたんだ。ちょうどそちらから来てくれるとは、実にいいタイミングだな!」

 開いた口が塞がらないとは、まさにこのことだ。親バカにも程がある。だからあの非常識な女が出来上がるのだろう。

「お断りいたします」

 俺が即座にそう告げるとは、微塵も想定していなかったのだろう。専務の顔から余裕の笑みが消え、引きつるように固まった。

 さらに後ろに控えていたみのりへと、矛先を向けようとする。

 だが、その強気な態度も長くは続かない。空気が一瞬で凍りつき、場の主導権が完全にこちらへ移る。

 これで、この父娘は終わりだ。

 みのりの周囲にまとわりついていた邪魔な存在は、これで排除された。ようやく本格的に動き出せる。

 ——みのりに落ちたあの日から、関係を進めるタイミングがやって来た。

***
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