恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 私をロビーラウンジのソファに座らせると、要さんはそのままフロントへ向かってしまう。そして、ほどなくしてスタッフを連れて戻ってきた。

「みのり、こっち」

「は、はい!」

 スタッフが荷物を預かってくれて、私たちはそのあとに続いた。すると、要さんの手が自然に私の腰へ添えられ、ふたりの距離がぐっと近くなる。

(えっ……ち、近い。しかも周りから見られてるし……)

 日本だけでなく、ロスに来ても要さんは相変わらず人目を惹いていた。すれ違う人たちは思わず彼に視線を向け、その流れで隣を歩く私にも目を留める。そして、その表情はどこか複雑そうなものへと変わっていった。

 その理由がわからないほど、私は鈍感ではない。要さんの隣に並ぶには、私はあまりにも平凡すぎるのだ。

「どうした?」

「ううん……」

 不思議そうにこちらを見つめる要さんには、きっと私の気持ちなんて微塵もわからないだろう。

 ずっと地味に生きてきた私にとって、今まさに人生最大級の試練が降りかかっていた。

 問題を無事に解決して、一日でも早く日本へ帰りたい――そう願いながら、私は隣を歩く要さんの横顔をそっと見上げる。

 ドキドキと胸が高鳴るのは、距離が近すぎるからだと自分を誤魔化しやり過ごした。

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