恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 どこを見ても高級ホテルか美術館のようで、とても個人の住宅とは思えなかった。

『日本の金持ちとは規模が違うだろう?』

 私の反応が面白かったのか、要さんが小さく笑う。

 けれど、その要さんだって時任家の御曹司だ。

 間違いなく一般人とはかけ離れたセレブな家庭で育っているはずなのに、その要さんがこう言うのだから、ブラウン家の財力は本当に桁違いなのだろう。

 私には想像することすらできない世界だった。

 大理石で造られた長い廊下を進み、案内された先は広々としたリビング。壁一面の大きな窓からは庭園が見渡せて、その奥にはまるでレストランのようなオープンキッチンが設けられている。

 そこでは白いコックコートを着たシェフが手際よく調理をしていた。

 しかも一人ではない。数人のスタッフが忙しく動き回っていて、完全に高級店の厨房そのものだった。

 勧められた席に腰を下ろすと、今度はソムリエらしき男性まで現れる。

 慣れた手つきでワインボトルを傾け、美しいグラスへと赤ワインを注いでいった。

(ここ、本当に個人の家なのよね……?)

 あまりにも現実離れした光景に、私は思わず要さんの顔を見てしまった。


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