恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 私の視線で言いたいことを察したのか、要さんは小さく苦笑しながら何度か頷いてくれた。

 その様子に少しだけ安心したところで、ブラウン家の(あるじ)がリビングへ姿を現し、食事会がスタートする。

 会話は終始、奥様が主導権を握って進んでいった。ご主人は穏やかな表情を浮かべながら、そんな奥様を優しく見守っている。

 時折相槌を打つだけで、ほとんど口を挟まない。その姿を見ていると、家庭内での力関係が何となく伝わってくる。

 奥様の一言が取引にまで影響を及ぼすという話も、なるほどと納得できた。

 しかも高橋父娘とは格が違い、奥様自身が役員として会社に在籍しているらしい。

 長年築き上げた人脈も桁違いで、業界内で奥様に敵う人はいないのだと要さんから教えてもらった。実際に本人を目の前にすると、その言葉に嘘がないことはすぐに理解できる。

『そうだ! いいこと思いついたわ!』

 突然、奥様がパンッと手を叩きながら声を上げた。その場にいた全員の視線が一斉に奥様へ集まる。


< 123 / 184 >

この作品をシェア

pagetop