恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 スティーブンの運転でホテルへ向かう途中、今回ロサンゼルスに来た理由――奥様の件については、すでにみのりへ伝えていた。

 そもそも、帰国して間もない頃に恋人役を頼んだのも、奥様の件がきっかけになっている。あの時は、あくまで形式上の恋人になってもらうつもりだったのに、まさか本当にみのりに惹かれてしまうとは思ってもいなかった。

 今になって振り返れば、あの日の出会いは俺にとっても衝撃的なものだったのかもしれない。

 ホテルに到着すると、案の定、みのりからは予想通りの反応が返ってきた。

 高級ホテル――しかも宿泊するのはスイートルーム。

 完全に別々の部屋ではなく、それでいてお互いのプライベートな空間はしっかり確保されている。今の俺たちの関係を考えれば、こうしたスイートタイプの部屋が一番理想的だ。

 部屋には広々としたリビングがあり、寝室はもちろん、トイレやシャワールームも完備されている。これ以上ないほど快適で、申し分のない空間だった。

 夕食までにはまだ時間があったため、俺はリビングで仕事を片付けている。一方のみのりは、自分の部屋でゆっくり過ごしているようだった。

――トゥルルルル……

 スマートフォンが鳴り、画面に表示された名前を確認してから通話ボタンを押す。

『はい、どうした?』

『ブラウン家の奥様にアポイントを取ったら、今日の夕食に招待された』

『相変わらずせっかちな人だな……』

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