恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 スティーブンがホテルで合流するというので、すぐにでも準備を始めなければ間に合わない。

——コンコン

「みのり、みのり」

 まだ恋人でもない女性の部屋へ勝手に入るのは気が引けて、俺は扉を少しだけ開け、その隙間から声をかける。

 室内を覗くと、みのりはベッドの上で眠っていた。長時間の移動に加え、慣れない時差の影響もあるのだろう。無理もない。

「みのり、起きてくれ」

 もう一度声をかけると、彼女はゆっくりと目を開いた。

 ブラウン家の奥様から夕食に招待されたことを伝えると、みのりは驚いたように飛び起き、そのまま慌ただしく準備を始める。しばらくして部屋から出てきた姿は、いつもと変わらない装いだった。

 派手なドレスを着ているわけでも、高価な宝石を身につけているわけでもない。それでも、その飾らない姿が彼女らしくて魅力的だ。

 自然体で、無理をしない。その姿勢こそが、みのりの一番の長所なのだと思う。

 ただ――今の姿で奥様が納得してくれるだろうか。

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