恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
「お姫様、お手をどうぞ」

「なっ……! からかわないでください!」

「ふっ、それだけ言い返せるなら大丈夫そうだな。今日は俺が守るから」

 真っ直ぐに私を見つめながらそう告げる要さんの眼差しは力強く、その一言だけで胸を締めつけていた不安が少しずつ溶けていく。

「よろしくお願いします」

 差し出された腕にそっと手を添えると、私たちは肩を並べて歩き出した。

 店の前にはタクシーではなく、黒く磨き上げられたリムジンが静かに横付けされている。その傍らでは運転手とスティーブンが私たちを待っていた。

『ミノリ……? わぉ〜、ビューティフル!』

 私の姿を見つけたスティーブンが目を輝かせながら駆け寄ってくる。その瞬間、要さんはさりげなく一歩前へ出て、私を背中へとかばうように隠した。

『カナメ! 邪魔するなよ!』

『お前は油断できない』

『ケチ!』

 いつものように軽口を叩き合う二人のやり取りがおかしくて、張り詰めていた気持ちがふっと和らいでいく。

『スティーブン、そろそろ行くぞ』

『わかったよ』

 不貞腐れたように肩をすくめるスティーブンを先頭に、私たちはリムジンへ乗り込み、パーティー会場へと向かった。


< 157 / 184 >

この作品をシェア

pagetop