恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 到着した会場は、ブラウン家を思わせる重厚な洋館で、建物全体が煌びやかな装飾に彩られていた。

 ゆっくりと敷地内へ入った車は、正面玄関の前で静かに停車する。長いリムジンはひときわ目立ち、会場に集まっていた人々の視線が一斉にこちらへ向けられた。

「要さん! ここで降りるんですか?」

「ああ、みのりをみんなに見せつけてやる」

「……」

 満面の笑みを浮かべて嬉しそうに言う要さんに、私は何も返せなかった。不安は消えない。それでも、今は要さんを信じるしかないのだ。

——ガチャ

 リムジンの扉が外からゆっくりと開かれる。要さんが先に車を降りると、その姿に気づいた人たちから歓声が上がった。

『きゃあ、カナメ様よ!』

『日本に戻られたって聞いていたのに』

『お近づきになりたいわ』

 若い女性たちが目を輝かせながら要さんを取り囲むように集まり始める。やはりロサンゼルスでも要さんは有名人で、特に若い女性たちから絶大な人気を集めているらしい。

 そんな要さんが、騒めく人々には目もくれず、リムジンの中にいる私へ優しく手を差し伸べた。

 一瞬ためらいながらも、その大きな手に自分の手を重ねる。要さんにエスコートされるように、私はゆっくりと車から足を踏み出した。

 そして次の瞬間――それまで賑やかだった会場が、水を打ったように静まり返る。


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