恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 手には自然と力が入ってしまう。そんな強張った私の手を、要さんがそっと優しく握ってくれた。

『あなた……ミノリさんだったわね』

『は、はい。すみません!』

 乱れた髪を慌てて整えながら、私は勢いよく頭を下げて謝罪した。

『頭を上げてちょうだい。謝るのは私のほうよ』

『えっ……?』

 恐る恐る奥様の顔を見ると、先ほどまでの険しい表情はなく、どこか申し訳なさそうに眉を下げて私を見つめていた。

『先日は失礼な態度を取ってしまったわよね。今日は来てくださってありがとう。それから、主人を助けていただいて、本当にありがとうございました』

 そう言うと、今度は奥様が深々と頭を下げる。

 大勢のお客様が見守る中、本日の主役である奥様に頭を下げられるなんて、あまりにもいたたまれない。私は慌てて一歩前に出ると、必死に声をかけた。

『あ、頭を上げてください! 私は当然のことをしたまでです!』


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