恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 世界的に環境問題やECOへの意識が高まりを見せる中、車業界もここ何十年かで大きく様変わりしてきた。ガソリン中心だった時代から電気へと移行しつつあり、さらには自動運転機能を備えた車の開発も着実に進んでいる。

 日本では一家庭当たりの車の保有率が下がり、免許を取得しない若者も増加傾向だ。それでなくても人口は減少の一途をたどり、加えて高齢化も進行している現状において、車業界は厳しい状況に立たされ、苦戦を強いられている。

 そんな逆境の中にあっても、副社長が『TOKITO』の後継者であるならば、不思議と不安は和らぐ――そう一週間という短い期間の中で、私ははっきりと実感していた。次世代においても確実に生き残っていける企業であると、疑う余地はない。

 副社長に対する絶大な信頼と、就任後は特に大きな問題も起こらないまま週末を迎えたことで、私はすっかり気を抜いてしまっていたらしい。

――キンコーン

 社内に、定時の終業時間を告げるチャイムの音が鳴り響く。

「ふぅ……」

 その音を耳にした途端、張りつめていた気が緩み、私は大きく息を吐き出した。ゆっくりと背筋を伸ばしながら、この一週間が何事もなく終わったことに、心の底から安堵する。
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