恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
「さぁ、仕事は終わったし、帰ってゆっくりしよう……週末は何をしようかな」
ぽつりとこぼしたひとり言が、執務室の静けさにそっと溶けていく。副社長室の隣にあるこの部屋は、私にとってありがたい一人きりの空間だ。余計な気配に邪魔されることもなく、仕事にもきちんと集中できる。
けれど、室長に書類を届けるために秘書室へ向かうと、同僚たちの視線がどうにも居心地悪くて落ち着かない。だから私は、できる限りこの部屋で過ごすようにしていた。
中でも社長秘書の草薙は厄介だ。本来なら社長室の隣に専用の執務室があるはずなのに、なぜか一日の大半を秘書室で過ごしているのだから、余計にややこしい。
「よしっ」
パソコンをシャットダウンして、軽く気合いを入れるように勢いよく立ち上がった。その瞬間――
――コンコンッ
「は、はい!」
副社長室に続く扉がノックされた。すっかり油断していたせいで、驚きに思わず大きな声が出てしまう。
「終わったか?」
「えっと……はい。ちょうど終わって、今から退社しようと思っていました。追加の仕事でしょうか?」
「そうか。じゃあ行くぞ」
「……」
あまりにもさらりと告げられたその一言。若干噛み合っていないその会話の意味をすぐには理解できず、私は言葉を失ったまま、ただ黙り込んでしまった。
ぽつりとこぼしたひとり言が、執務室の静けさにそっと溶けていく。副社長室の隣にあるこの部屋は、私にとってありがたい一人きりの空間だ。余計な気配に邪魔されることもなく、仕事にもきちんと集中できる。
けれど、室長に書類を届けるために秘書室へ向かうと、同僚たちの視線がどうにも居心地悪くて落ち着かない。だから私は、できる限りこの部屋で過ごすようにしていた。
中でも社長秘書の草薙は厄介だ。本来なら社長室の隣に専用の執務室があるはずなのに、なぜか一日の大半を秘書室で過ごしているのだから、余計にややこしい。
「よしっ」
パソコンをシャットダウンして、軽く気合いを入れるように勢いよく立ち上がった。その瞬間――
――コンコンッ
「は、はい!」
副社長室に続く扉がノックされた。すっかり油断していたせいで、驚きに思わず大きな声が出てしまう。
「終わったか?」
「えっと……はい。ちょうど終わって、今から退社しようと思っていました。追加の仕事でしょうか?」
「そうか。じゃあ行くぞ」
「……」
あまりにもさらりと告げられたその一言。若干噛み合っていないその会話の意味をすぐには理解できず、私は言葉を失ったまま、ただ黙り込んでしまった。