恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 帰りの車で、みのりは静かに眠ってしまった。きっと張り詰めていた緊張の糸が、ようやく切れたのだろう。

 無防備な寝顔を見つめながら、俺は改めて心の中で誓った。

「絶対に幸せにする。後悔はさせない」

 その想いは、誰に向けた言葉でもない。俺自身への誓いだった。

 ホテルへ到着すると、眠ったままのみのりをそっと抱き上げ、そのまま部屋まで運ぶ。

 ロビーを歩く俺たちへ、宿泊客やスタッフの視線が自然と集まっていた。

 そして、どこからか小さく響くシャッター音——おそらく、この光景もあっという間に世間へ広まるのだろう。

 それで構わない。いや、むしろ望むところだった。

 俺は堂々と、みのりを大切な女性として守り抜くつもりだからだ。部屋へ戻ると、みのりを起こさないよう優しくベッドへ寝かせる。

 穏やかな寝息を立てるその寝顔を、俺はしばらくの間、飽きることなく見つめていた。

 我慢ができなくなって、そっと触れるだけのキスをする。続きはこれからゆっくりと進めていくつもりだ。

 ふと視線を落とすと、ドレスの裾は汚れているだけではなく、転倒の衝撃でところどころ破れてしまっている。

 それでも、あの瞬間のみのりは迷うことなく飛び出し、一人の命を救おうとした。

 あの勇気ある姿を、俺は一生忘れることはない——

***
< 174 / 184 >

この作品をシェア

pagetop