恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
『ん? 何かあったのかな?』

 ハンドルを握るスティーブンが、前方を見つめたまま不思議そうに呟いた。

『どうした? 何か問題か?』

 要さんが前方へ視線を向けながら尋ねる。

『それが、空港の入り口にずいぶん人だかりができているんだ』

 スティーブンの言葉に、私もフロントガラス越しに目を向ける。確かに多くの人が集まり、何やら騒がしい。

『何かあったんですかね?』

 まさか、その人だかりが自分たちを待っているとは夢にも思わず、私は呑気にそんなことを考えていた。

——ガチャ

 車が静かに停車し、ドアが開く。その瞬間、一斉に私たちの車へと無数の視線が向けられた。

 それでも私は、「きっと有名人でも来ているのだろう」くらいにしか思っていなかった。

『じゃあな、スティーブン』

『ありがとうございました』

 スティーブンに礼を言い、私たちは車を降りた。

 ——その瞬間だった。

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